■川崎Fではレアンドロ・ダミアン旗手怜央

―今季のJリーグでは、これまでに湯浅さんが挙げた湘南、仙台、横浜FMのほかにも、たくさんチャレンジングなサッカーに取り組んでいるチームがありますね。

湯浅 金明輝監督のサガン鳥栖と長谷部茂利監督のアビスパ福岡もすごい。今季は苦しんでいるけれど、片野坂知宏監督が率いる大分トリニータも、私は高く評価しています。金明輝監督については私はあまりよく知らないのですが、とにかくすごい運動量で攻守をこなし、結果も出している。長谷部監督は高校生時代から知っていますが、桐蔭学園高校時代には李国秀監督から「どこでボールを奪い返すか、イメージをもて」といつも言われていました。「イメージは自分でつくるんだ」と。自分自身が主体的に考えてプレーする選手だったから、監督になっても、水戸ホーリーホックや福岡での成功があるのかもしれません。

――首位を独走している川崎フロンターレはどうでしょうか。

湯浅 もちろんです。選手たちが主体的に考えて取り組んでいるから、今季の強さの根源であるあの強烈な守備ができるのでしょう。川崎は、風間八宏監督がほぼ完成しかけていたチームを鬼木達監督が引き継ぎ、発展させました。そのなかで、個人的に見ても、レアンドロ・ダミアンは、もしブラジル代表の監督にあの選手を選ぶ眼力があったらブラジルのサッカーに革命が起こるかもしれない。天才の個人技に任せるのではなく、本当のチームプレーによる攻撃ができるのではなどと考えてしまいます。若手では、旗手怜央の頭の良さ、多彩なポジションでプレーできる能力に大きく惹かれています。

――浦和レッズのサッカーも大きく変わりましたね。

湯浅 リカルド・ロドリゲス監督は、本当に優れたアイデアと能力をもった監督です。「戦術オタク」と思っているファンが多いかもしれませんが、どういうサッカーをするのか、明確なイメージを与え、選手たちに考えさせながらチームをつくっているという点で、正しい路線を進んでいると思います。J2で無名だった小泉佳穂明本考浩を自ら発掘し、彼らの守備にはいるプレーの見事さがチーム全体に浸透しつつあります。

――2位につけている名古屋はどうでしょうか。

湯浅 このチームは少し変わっています。やはりマッシモ・フィッカデンティ監督がイタリア人だからでしょうか。相手からボールを奪い返すことに、ものすごく特化したチームです。ただ、攻撃は個人に頼るところが多く、吉田豊以外のDFは攻撃参加も多くはない。マテウス前田直輝相馬勇紀らの個人の打開に頼り、「解放されきっていない」という印象です。しかし選手たちはある種の「におい」を感じているのではないでしょうか。ボールを奪い返すというのは、サッカー選手にとって大きな快感ですから。

※第3回に続く

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