■有名なFAカップでの一場面

 イングランドでは、1999年のFAカップ準々決勝でのアーセナル対シュエフィールド・ユナイテッドの試合があまりに有名だ。1-1で迎えた後半30分、アーセナルのゴール前でシェフィールドのMFモリスが倒れたままだったのを見たシェフィールドのGKがボールをタッチに大きくけり出した。そのスローインをアーセナルのMFパーラーがシェフィールドのGKに向かってゆるく投げたのだが、そこにアーセナルFWカヌが突然ダッシュしてこのボールを受け、中央に入れる。そしてボールを受けたFWオフェルマルスが楽々とゴールにけり込んでしまったのだ。そして試合は2-1のままアーセナルが準決勝に進んだ。

 …と思われたが、思いがけないことが起こった。試合後、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督が「あの2点目はスポーツ的な観点で正しいものではなかった。私たちは試合のやり直しの提案をしたい」と発言したのだ。

 試合のなかのすべての主審の決定は最終である。ルール上、この試合は2-1でアーセナルの勝利に違いない。それを無効にするということではなく、もう1試合やって準決勝進出チームを決めようというのである。ノックアウト式のFAカップならではの絶妙な提案だった。イングランド協会は即座にその提案を受けて10日後の再試合を決めた。

(3)へ続く
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