■鮮烈だった宮城天は20歳のアカデミー育ち

 8月14日のJ1リーグ第24節では、川崎は柏レイソルと対戦し、スコアレスドローに終わった。攻撃力を誇る川崎としては無得点に終わったこと、しかも相手に退場者が出たことで数的優位で戦ったのに相手を崩しきれなかったことは不本意な結果だったろう。だが、とくに川崎の攻撃がおかしかったわけでもなかった。

 何と言っても、この試合では柏が非常にタイトで厳しい守備をしたことがスコアレスドローの原因だった。柏のDFのエメルソン・サントスは、川崎のワントップ、レアンドロ・ダミアンと互角以上の勝負をしたし、川崎の選手がパスを受ける瞬間に反則ギリギリの激しいプレーで川崎の攻撃を分断することに成功した(その代償として、柏は後半、DF上島拓巳がレッドカードを突き付けらることになったのだが)。

 これまでの川崎だったら、こういう展開になれば、最終的には三笘の「個の力」で打開することができた。そういう意味で、三笘不在の影響がかなり大きいとも感じられた。しかし、58分から三笘と同じ左サイドハーフのポジションでプレーした弱冠20歳の宮城天が、三笘と同じようなスタイルのドリブルで突破を図り、短い出場時間ながら、旗手の5本に次ぐ3本ものシュートを放った(うち1本はポストを直撃)。宮城は、川崎のアカデミー出身の20歳。カターレ富山からレンタルバックで加わった若手である。

 こうして、三笘と田中という主力の2人が流出しながらも、大物の補強などせずに現有戦力で戦い、さらに将来性豊かなタレントの存在を誇示した川崎フロンターレ……。やはり、「王者の貫録」を感じさせるチームである。

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