川崎フロンターレ「我が道を行く」特殊性【世界とJリーグの移籍市場】「青年よ荒野を目指せ」(3) の画像
川崎フロンターレ時代の田中碧 撮影:中地拓也

古橋亨梧がまるで背中から翼がはえたように、ヨーロッパで飛翔している。三笘薫田中碧林大地などヨーロッパ各国に散っていった若手プレーヤーたちの活躍も待たれる。Jリーグに目を移せば、ドイツからのGK、ポルトガルからはFWなど、代表クラスがやって来た。そして大迫勇也酒井宏樹など長らくJのピッチでは見られなかった現役代表プレーヤーが帰って来る流れも生まれている。夏の移籍市場で日本をめぐるプレーヤー勢力図は大きく変わった。これからどのように展開していくのか、お楽しみはこれからだ。

第2回はこちらより

川崎フロンターレは我が道を行く

 こうして、この夏の移籍市場ではJリーグの各クラブは積極的な補強に動いた。浦和や神戸がすぐにチームとして結果を出せるかどうかは何とも言えないが、将来に向けての希望のようなものがはっきりと見えてくる。

 そうした中で、三笘薫と田中碧という攻撃面での主力選手2人を放出した川崎が慌てて補強に走ることなく、現有戦力を生かしながら戦うというのも特筆すべきである。

 東京オリンピックを戦ったUー24日本代表には川崎から田中碧、三笘薫、旗手怜央の3人が選出されており、さらにDFとしてもMFとしても頼もしい活躍をしてみせた板倉滉とFWのサブとして働いた三好康児も川崎出身のプレーヤーだった。そしてさらに、攻撃の切り札として活躍した久保建英も小学生時代を川崎の下部組織で過ごした選手なのだ。

 次々と優秀な若手を育てる育成部門があるからこそ、川崎は主力の流出があっても、現有戦力およびさらに新しい戦力で戦うことができるのだ。そして、川崎は他クラブから加入した選手も含めて、新戦力がチームに馴染むのが非常に早いチームだ。ローテーションしながら様々な組み合わせで選手をピッチに送り込む鬼木達監督の手腕でもあるだろうし、またチームとしてのやり方が確立されているからこそ、新加入選手にとって自らに求められているタスクが明確になるのだろう。

 田中碧が抜けた川崎の中盤で期待されていた大島僚太は、天皇杯の試合で再び故障してしまった。そうなると、MFとして期待されるのは今シーズン、アビスパ福岡からレンタルバックという形で加わった遠野大弥であり、桐蔭横浜大学から今シーズン加わった橘田健人である。

 7月に行われた天皇杯全日本選手権の3回戦ジェフユナイテッド千葉との試合では、橘田が素晴らしいプレーを披露した。

 何より目だつのは、そのスピード感だ。

 ボールを受けてターンしてから一瞬で加速して相手を振り切るプレーは、これまでの川崎にはないものであり、59分にPKを獲得したプレーも登里享平が入れたパスに反応した橘田のスピードに千葉のDFが遅れて足を出したことによるものだった。しかも、単純なスピードだけでなく、動きの緩急とか、パスを受ける瞬間の体の向きやパスコースの選択など、川崎のパスサッカーに必要な要素をすべてこなせる選手のようだ。

 いずれにしても、橘田のあのスピード感はこれまでの川崎のMFにはないものであり、橘田がうまくチームにフィットすることができれば、川崎の攻撃にまた一つ新しい要素が付け加わるのではないだろうか。

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