■数か月の苦しみを払うジャンプ

 ちなみに、柏を相手にした試合は、ユンカーにとって奇妙な感覚だったのではないか。というのは、FKボデ/グリムトのクラブカラーは黄色で、チームは上から下まで黄色のユニホームを着ているからだ。柏の黄色のほうが派手で、ボデ/グリムトはややくすんだ感じの黄色だが、それでも上から下まで黄色の柏を相手の得点は、彼に少し複雑な感情をもたらしたかもしれない。

 FKボデ/グリムトとの契約は、昨年はじめからの3年間。2022年いっぱいまでだった。ことしのはじめに浦和からのオファーを受け、移籍を決意していたユンカーだったが、新型コロナウイルスによる日本の入国制限で来日することができず、5月開幕のノルウェー・リーグに備えるためにトルコで行われたボデ/グリムトのキャンプに帯同するしかなかった。そこからの離脱となり、サポーターから「裏切り者」扱いも受けたという。

 4月はじめに浦和との契約がまとまってからも、来日後すぐにはチームに合流できず、Jリーグが福島県の「Jヴィレッジ」で開催した「Jリーグバブル」にはいり、外部とは完全遮断のうえ、1日1時間限定で個々にトレーニングするという日課を2週間こなして、ようやく4月26日にチームに合流した。

 そうした数カ月間の苦しみの末に初出場した試合でのいきなりの得点。彼はジャンプして喜びを表現した。だが得点以外の場面では、彼はあまり目立たない選手だった。クラブが発表しているデータによれば186センチ、73キロだが、「大型FW」のイメージには遠く、ヘディングも強いとは言えない。ボールタッチの回数も多くはなく、この試合では33分にもう1本シュートを放っているが、相手DFにブロックされてゴールはならなかった。

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