■智将ミルティノビッチの「第2ユニホーム大作戦」
私が見たワールドカップの第2ユニホームで最も傑作だったのは、1990年イタリア大会でのコスタリカだ。この国の第1ユニホームは国旗を模した「赤-青-白」。このユニホームを着て、大会初戦、ワールドカップ・デビュー戦でスコットランド(白を着用)に1-0で勝つというセンセーションを巻き起こした。第2戦はブラジル。「黄色」だから、コスタリカは第1ユニホームで問題なかった。ところがこの試合に、コスタリカは「白黒縦じま」という第2ユニホームで登場したのである。
試合会場はトリノである。トリノと言えばユベントス。ユベントスといえば「白黒縦じま」。コスタリカが「我が町の誇り」に敬意を表してこのユニホームにしてきたのかと思った観客は、「判官びいき」も手伝って、こぞってコスタリカに声援を送った。困惑したブラジルは前半に記録されたミューレルの1得点だけにとどまり、1-0の辛勝だった。
この「白黒縦じま」は、当時のコスタリカの正規の第2ユニホームだった。この国最古のクラブであるSCラリベルタ(1905年創立)に敬意を払い、そのユニホームをそのままナショナルチームの第2としていたのである。ブラジル戦を迎えるに当たって、智将ボラ・ミルチノビッチが「観客を味方にしよう」と考えたのが、「第2ユニホーム大作戦」だったのだ。ブラジルには敗れたものの、コスタリカはスウェーデンに2-1で勝ち、初出場で見事グループを突破、ラウンド16に進んだ。