■イングランド代表のゲン担ぎ
世界のサッカーで最も有名な第2ユニホームは、1966年ワールドカップの決勝戦でイングランドが着用した「赤」だろう。イングランド代表のユニホームといえば「白」。この大会でも、準決勝までは白いユニホームでプレーした。だが決勝戦の相手は「白-黒-白」の西ドイツである。
現在のワールドカップには、対戦カード名の左側に書かれたチーム(チームA)がユニホームの優先権をもつという規約がある。しかし当時はこんな細かな規約はなかった。両チームはコイントスを行い、西ドイツが「白-黒-白」の第1ユニホームを着ることになった。イングランドは、第2の「赤-白-赤」である。
第2次世界大戦後、両国の対戦はこれが5試合目。過去の対戦では、ロンドンでの2試合ではイングランドが「白」を着て西ドイツは「緑」、ベルリンとニュルンベルクでの対戦では西ドイツが「白」でイングランドが赤だった。1966年ワールドカップの決勝戦は、イングランドがホームのウェンブリーで赤を着る非常に珍しいケースだったのだ。そしてイングランドは延長の末4-2で勝ってワールドカップ初優勝を果たし、以後、積極的に「赤」を着るようになる。
4年後、1970年ワールドカップ・メキシコ大会の準々決勝で両国が対戦したとき、イングランドは当然のように「赤」を着た。この第2ユニホームは、西ドイツと戦うためにもってきたものだった。この大会に向けてイングランドは第1の「白」のほかに第3として「水色」も用意し、グループリーグのチェコスロバキア戦で使用した(相手の「白」と見分けにくく、非常に評判が悪かった)。「赤」は対西ドイツの「必勝アイテム」だったのだが、試合は3-2で西ドイツが4年前の借りを返した。