■磐田の東京五輪世代・伊藤洋輝の可能性
大宮対磐田戦には、日本代表と五輪代表を率いる森保一監督の姿があった。果たして、誰をチェックするためだったのか。
日本代表と五輪代表の招集歴から推測すれば、磐田の小川航基が第一候補として浮上する。しかし、今シーズンのパフォーマンスから判断すれば、磐田の伊藤洋輝が気になっていたのではないだろうか。
プロ3年目で21歳の伊藤は、リーグ戦再開後の全10試合にフルタイム出場している。チームで彼ひとりだけだ。フェルナンド・フベロ監督の信頼をガッチリとつかんでいる。
再開初戦の京都戦には、本来のボランチで先発した。しかし、後半からCBにポジションを下げると、ここから最終ライン中央が定位置となる。チームにはボランチの選手が多いこともあり、フベロ監督は名古屋グランパスからレンタルバックした彼のCB起用をテストしていたのだった。
188センチ、81キロのサイズがあり、レフティーである。最大の持ち味は高精度のキックだ。最終ラインから両サイドへロングフィードを供給し、中央へズバリとタテパスを通す。攻撃の局面ではゲームメーカーのようにプレーするのだ。
大宮戦ではプロ初ゴールをマークした。得意の左足を振り抜いた弾丸ミドルは、GKにとってノーチャンスのゴラッソである。
試合は2対2のドローに終わっただけに、「チームの勝利につなげたかった部分はある」と話した。そのうえで、「初ゴールを自分自身としては祝いたい」と素直な心境も明かした。
世代別代表の常連で、18年には森保監督のもとでU-21日本代表に招集されている。翌19年にはU-20W杯に出場したが、このところは代表から遠ざかっていた。
東京五輪世代のCBには、冨安健洋や板倉滉らの海外組がいる。J1で実績を積んでいる選手も多い。伊藤は後方からの競争参加となるが、現在のパフォーマンスはチャンスを与えられるにふさわしいものがある。
東京五輪が予定どおりに開催されていたら、おそらくチャンスはなかっただろう。1年間の延期によって広がった可能性を生かせるかどうかは、誰でもない彼次第である。