■なかなか見られない光景
ところがとんでもないことが起こる。1分あまりの中断の後、福岡の前嶋がコーナー付近に向かってスローンをする。受けるのは、中央から走り出たFWルキアン。彼の走り方、そしてボールを受けてターンした様子を見た前嶋が「相手に返せ」と叫ぶ。しかしルキアンはそのまま中央に戻し気味のパスを送る。そこに走り込んできたのがクルークス。得意の左足を一閃すると、ボールは低く名古屋ゴールの右下隅に突き刺さったのだ。
名古屋の選手たちがいっせいに詰め寄ったのは、ルキアンのところだった。名古屋に返すべきボールを、ゴールへのアシストにしてしまったからだ。その一方で、クルークスはスタンドのサポーターに向かって叫び、喜びを表現している。
名古屋の長谷川健太監督が両手を広げて「いったい何だ!」と怒りを露わにすると、福岡の長谷部茂利監督が寄ってきて何かを話す。いちどベンチに戻った長谷部監督が再び長谷川監督のところに行き、何かを説明する。そしてピッチの選手たちに何かを指示する。その指示にルキアンやクルークスが不満を表明する。
24分過ぎ、ようやく名古屋がキックオフ。そして永井がするするとドリブルで進み、ゴールにけり込んだのだ。名古屋が2-1と再びリードを奪う。長谷部監督は、守らずに相手に得点を与えるよう指示を出したのだ。