横浜FMより「最大で10試合」多く戦う川崎F「川崎フロンターレと横浜F・マリノス」【J1死闘】(3)の画像
川崎フロンターレの鬼木達監督はこの日程を乗り切れるか…… 撮影:中地拓也

破壊的な攻撃力を武器に猛追する横浜F・マリノスに、手負いながらも首位を譲らない川崎フロンターレ―。Jリーグの首位攻防がデッドヒートの様相を見せてきた。ここまで首位をひた走ってきた川崎の失速の原因は何か、その攻撃力に復活の見込みはあるのか。勢いのついてきた横浜FMの強さは、ハイレベルなリーグ上位チームを相手にどこまで通用するのか。2021年J1リーグはいよいよ佳境に突入する。

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■横浜FMを止めた鹿嶋アントラーズの守備戦術

 ところが、ここがJリーグというリーグの難しいところなのだが、あるやり方が機能したかと思うと、必ず対戦相手はそのストロングポイントを分析して、対策を立ててくるのである。

 それが、第27節の鹿島アントラーズだった。5ゴールを奪った仙台との試合では18本のシュートを放っていた横浜FMだったが、鹿島戦ではシュートは7本に抑えられてしまった(もっとも、鹿島もシュート数は3本だけだったが)。

 鹿島戦でも横浜FMはサイドからの攻撃を仕掛けた。

 荒木遼太郎のヘディングで1点を奪われた後の19分には、右サイドでつないで、最後はマルコス・ジュニオールからのパスを追った小池がゴールラインに近い位置からマイナス気味のクロスを入れ、天野がシュートを放った場面があった

 この他にも、両SBが深い位置まで進入する場面が何度もあったが、しかし、いずれも効果的な攻めにはつながったとは言えなかった。

 そして、30分には和田が深い位置まで進入してパスを受けてクロスを入れたのだが、このクロスを鹿島の三竿健斗にカットされ、そのままボールはディエゴ・ピトゥカに渡り、ピトゥカがそのまま持ち上がって、右に開いていた上田綺世に渡って2点目を奪われた。和田が攻め上がった裏のスペースを見事に利用したカウンターだった。

 鹿島がどこまで意識的だったかは分からないが、結果として横浜FMのSBは深い位置まで引っ張り込まれて攻めのスピードを奪われ、さらに自らが上がったスペースを利用されてしまったのだ。

 本来、横浜FMが狙っているのはもっと浅い位置からのいわゆるアーリークロスだったのだ。だが、鹿島がしっかりとクロスのコースを切っていたのでアーリークロスは入れられず、そのため両SBが深い位置まで進入する形になり、クロスが入るまでに時間がかかり過ぎた。そして、深い位置まで進入した横浜FMのSBに対しては鹿島の両SB(常本佳吾永戸勝也)がしっかり待ち構えて対応。もちろん、サイドハーフも守備には協力する。そして、CBの2人(犬飼智也町田浩樹)とボランチの2人(三竿とディエゴ・ピトゥカ)も入ってくるクロスのコースを見極めてゴール前で相手FWをフリーにすることがなかった。

 つまり、絶好調だった横浜FMが鹿島の守備戦術に見事にはまってしまった。そんな試合だったのだ。「さすが鹿島」という戦いだったし、同時にある一定のチーム力を持つチームであれば、横浜FMの破壊的な攻撃力をうまく戦術的に受け止めることができるということが証明された試合でもあった。

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