■引き分けた広島戦と違っていたこと

 レアンドロ・ダミアンがペナルティエリア内で受けたボールをダイレクトで旗手に落とし、このマルチロールプレイヤーがボールを豪快にネットに突き刺したのだ。試合開始からわずか3分の出来事。誰もが驚く早さで、スコアが動いた。ペナルティエリアに侵入するタイミングはもちろん、名古屋GKのランゲラックが反応できないシュートスピードと、完璧な一撃だった。

 旗手はさまざまなポジションでプレーできるため、試合中にチームに柔軟な戦術対応をもたらすことができる選手だ。もともとは前線の選手のため、フィニッシュの部分においては信頼できる。名古屋陣地に攻め込むことを想定した鬼木監督としては、そこを期待しての抜擢だろう。先発を外れた脇坂は、直近の試合である4月18日のホーム広島戦で先発し、チーム最多タイとなる4本のシュートを放ったものの、ゴールを奪うことができなかった。追加点を奪うことができなかった川崎は、結局この試合を1-1で引き分けた。脇坂一人の責任ではないが、一歩及ばなかった“決定力”が連勝記録を止めることとなった。

「もう一戦あるので細かいことは言えない」と試合後に話した鬼木監督がどう考えていたかは、推測するしかないが、大一番で送り出した旗手が電光石火で試合を動かした。名古屋はここまで12試合で3失点しかしておらず、早々に点数を奪われたことで間違いなく動揺があったはずだ。

 その隙を見逃さず、10分にレアンドロ・ダミアンが追加点をゲット。このブラジル人ストライカーは、さらに23分にもゴールを決めて見せる。ホーム&アウェイの180分で雌雄を決するはずのカードだったが、最初の23分で“Jリーグ最強の盾”を粉砕してしまったのだ。

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