■守備面に不安の川崎フロンターレ/若手が急成長を見せる鹿島アントラーズ
さて、いよいよ優勝争いである。最大の焦点はもちろん川崎フロンターレだ。昨年の強さを見ると、川崎には、当然、ACLとJリーグの2冠という、これまで成し遂げられたことのない偉業も期待できそうな気がする。しかし残念ながら、川崎は、国内で8連覇をしながら欧州も世界も制覇するという「バイエルン・ミュンヘン」までの存在ではない。バイエルンは、ブンデスリーガのなかでは2位以下を大きく引き離す年間収益を上げ、その資金力で常に戦力を保持しているが、川崎は、そこまで他を圧倒する力をもっているわけではない。
今季も継続される「5人制交代」は川崎の豊富な攻撃陣の力を再びフルに発揮させるだろうが、守備陣は選手層が薄く、さらにMF守田英正という守備面の最大の力を失ったことで、不安定になる恐れが高い。過密日程の昨年は「川崎対策」を練ることができなかった相手チームも、今季はしっかりと対策をとってぶつかってくるはずだ。ACLでは快進撃を続けるのではないかと期待される川崎だが、それがJリーグで苦戦する原因にもなるだろう。
というわけで、今季の優勝争いは、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズ、サンフレッチェ広島、そしてFC東京といった「非AFC組」に絞られるのではないか。
このうちFC東京は、昨年非常にしっかりとしたサッカーを見せたが、懸案だった得点力アップの見通しが立たないのが気がかりだ。守備面では、昨年のACLから採用している森重真人のアンカー起用が機能するだろうが、攻撃のバックアップとして急成長した原大智が流出してしまったのは痛手だ。
シーズンを通じて首位争いにからみそうなのが鹿島アントラーズだ。ザーゴ監督のサッカーが1年で完全に浸透し、若手が急速に伸びた。なかでもオリンピック代表候補の上田綺世がJリーグを代表するストライカーとなり、昨年18ゴールを記録したエベラウドと組むFWラインは危険極まりない存在となった。