■「停電」が日本の勝利をアシストした?

 スタジアムの照明の一部が「落ちて」しまったとき、主審はどんな基準で試合続行か否かを判断するのだろうか。1999年にナイジェリアで行われたワールドユース選手権(現在のFIFA U-20ワールドカップ)では、フィリップ・トルシエ監督率いる日本が停電をきっかけに勝利をつかんだ。

 この試合、日本は引き分け以上なら決勝トーナメントに出場できるが、負ければ敗退という状況にあった。前半30分、左CKから鮮やかなヘディングシュートを決められたかに見えたが、何のファウルだったのか、幸運にも得点は認められなかった。その直後、トルシエ監督はFW永井雄一郞に代えて左ウイングバックの石川竜也を入れ、左ウイングバックでプレーしていた本山雅志をFWに上げた。

「停電」が起きたのは、その2分後のことだった。メインスタンドから見て左側の2基が完全に「落ちて」しまったのだ。それでもチュニジアのムラード・ダーミ主審は試合を続行させる。前半39分、FW高原直泰に対するファウルでペナルティーエリアわずか外、やや右側で日本にFKが与えられる。MF小野伸二が小さく左に出し、8分前にはいったばかりの石川が左足を振り抜いてきれいなカーブのボールをゴールの左上に送り込む。「完全逆光」のイングランドのGKポール・ラフブカはほとんど見えていなかったはずだ。懸命にジャンプしたが、ボールがゴールネットを揺すった。

「落ちていた」左側の2基の照明はハーフタイム中に復活。日本はその立ち上がりに小野がドリブルから見事なシュートを決め、2-0と突き放すと、相手が闘志を失い、そのまま勝って1位で決勝トーナメントに進む。そして快進撃の末、準優勝という歴史をつくるのである。このワールドユースの好成績が3年後の2002年ワールドカップにもつながることを考えれば、日本のサッカー史にとって忘れることのできない「停電事件」と言えるだろう。

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