サッカーの世界は、常に変動している。目まぐるしくトレンドが入れ替わりながら、文化としての発展を示していく。日本でも、さまざまなカテゴリーの垣根を越えて、そうした潮流が見える。サッカージャーナリスト後藤健生は、そこにフットボール文化の浸透を感じている。
■J1を制したスタイル
川崎フロンターレと横浜F・マリノスは、もちろん攻撃のやり方にかなりの違いはあるが、どちらも自分たちでボールを握る時間を長くして、自分たちでボールを動かして相手の守備を崩そうという、テクニカルで攻撃志向の強いスタイルのチームだった。
だが、川崎の“神通力”は昨シーズンから低下し、今シーズンはなんと8位と低迷。天皇杯全日本選手権のタイトルを確保するにとどまった。
三笘薫や旗手怜央、守田英正や田中碧といった中心選手が相次いで海外流出した穴を埋め切れていなかったことや昨年から負傷者が連続したことも苦戦の原因だったが、対戦相手の「川崎対策」が進み、かつてのようにパスワークだけで相手の守備を崩すのが難しくなってきているのも事実だ。
一方、横浜FMはJ1リーグでは準優勝という成績を残したものの、リーグ戦の終盤は失速気味で、最終節を待たずにヴィッセル神戸の優勝決定を許し、一つもタイトルを獲得することができなかった。
アンジェ・ポステコグルー監督が築き上げたチーム全員が攻撃に絡んで、アップテンポに攻めるスタイルはやや色あせてきており、攻撃は前線のブラジル人FWの個人能力に依存しているのが現状だ。
そんな中で、ヴィッセル神戸は「相手陣内からの堅守でボールを奪ってショートカウンター」という戦い方を1シーズンにわたって貫いて初優勝を飾った。
神戸だけではない。名古屋グランパスやサンフレッチェ広島などもカウンタープレスを武器に戦って上位に食い込んできているし、昇格プレーオフを制して16シーズンぶりのJ1昇格を決めた東京ヴェルディなども、やはりカウンタープレスを志向しているチームだ。