■ヨーロッパ追従は正しいのか

 今シーズンのJ1リーグで上位を占めたサンフレッチェ広島浦和レッズ鹿島アントラーズなどは、好調時には優勝も狙えるほどのサッカーを見せたが、シーズンを通じてそれを維持できなかった。選手層を厚くする必要があるだろう。

 浦和は選手層も十分なはずで、就任早々チームをまとめ上げてACL優勝を成し遂げたマチェイ・スコルジャ監督の手腕に期待がかかったが、リーグ戦終盤ではACLと並行して戦う中でターンオーバーをするとチーム力が落ちる状態が続いてしまった。まだ、スコルジャ監督の理想には遠かったはずだ。

 そして、スコルジャ監督は1シーズン限りでチームを離れることが決定。浦和はまたも迷走状態に入ってしまうのか、懸念される。

 川崎や横浜FMのような圧倒的な攻撃力を持つチームが圧勝してきたここ数年に比べると、堅守速攻の時代に入った今シーズンのJ1リーグは地味な印象だった。

 ヨーロッパでも、かつてのバルセロナのティキタカの時代が終わり、現在は堅守速攻型、カウンター・プレスのサッカーが全盛となっている。つまり、表面的にはJ1リーグの傾向もヨーロッパのトップと同じ方向を向いているということができるのかもしれない。

 しかし、ヨーロッパのいわゆる「5大リーグ」と比較すれば、J1リーグのサッカーのプレー強度やスピードは一段階落ちると言わざるを得ない(「5大リーグ」はいわば“世界選抜”的なリーグであり、基本的に日本人選手主体で戦っているJリーグと比較することにはもともと無理がある)。

 そうした中で、単に「カウンター・プレス型」が主流になっているからと言って、「J1リーグのサッカーが世界の傾向に合致している」と評価するのはいささか短絡的なような気がする。

 将来、Jリーグを発展させてヨーロッパ並みのリーグとするために、現段階ではどのようなサッカーを目指すべきなのか。現段階でカウンター・プレスのサッカーを推し進めていってよいのかは、よく考えるべき課題である。

 そういう意味では、来シーズンに向けては堅守速攻型一辺倒ではなく、再び「ポゼッション志向」のチームが盛り返すといった展開を期待したいものである。

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