■財産たる選手の酷使
現在は、FIFA傘下の全地域連盟にチャンピオンクラブの大会がある。それはFIFAに加盟する世界の国々のクラブチームすべてが、従来の大会形式ではあっても、FCWCに出場し、「世界チャンピオンクラブ」となる夢をもつことができることを意味しており、FIFAはそれを保証していることになる。これで十分ではないか。
繰り返すが、2025年にスタートする新しいFCWCには、欧州から12ものクラブが出場する。どのようにそのクラブを選ぶのかはこれからの検討事項になるが、レアル・マドリード、FCバルセロナ(以上スペイン)、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、チェルシー(以上イングランド)、バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント(以上ドイツ)、パリ・サンジェルマン(フランス)、ユベントス(イタリア)といった欧州の「ビッグクラブ」の多くが含まれるのは必至だ。
これらのクラブには、ワールドカップで優勝を争う国の代表選手の多くだけでなく、世界のファンが見たいと願うスター選手の大半が含まれている。彼らを見たいという思いをワールドカップのように引きつけ、それによって巨額の放映権収入やスポンサー収入を獲得しようというのが、インファンティーノの唯一といっていい狙いなのだ。
当然、FIFAは出場クラブに多額の出場料を約束し、賞金をかけるだろう。クラブ側としては、莫大な移籍金や法外な年俸を注いできた選手たちに3ないし7試合多く働かせるだけで収入を大きく伸ばすことができるなら、その誘惑に打ち勝ちがたい魅力を感じるに違いない。
そしてその結果、選手たちは十分な休暇を与えられないまま何年間も連続してプレーし続けなければならないようになるのである。サッカーにとって唯一の「財産」と言っていい選手たちの健康を犠牲にしてまで、FIFAが、そしてもしかしてクラブが収入を増やすことは、サッカーの未来にどんな意味をもつのだろうか。