■カネを追い続けるFIFA

 FIFAは32チームのFCWC案をすみやかに撤回すべきだ。少なくとも現状の形に戻すべきだ。できるなら、現在行われているFCWCを、UEFA、CONMEBOLを中心にした6つの地域連盟の「共同開催」として組織替えし、FIFAはクラブチームのサッカーからは手を引くべきだ。そして代表チームのサッカーに全力を注ぐべきだ。

 まずは、あらゆる面で無理のある「48チームのワールドカップ」を再考し、できるだけ早く32チームの大会に戻すことを検討しなければならない。カタール大会で再確認されたように、ワールドカップは世界のサッカーファンに訴えかける大きな力をもち、その可能性はまだまだ広がっている。「ナショナルチーム」という「非日常」のサッカー、その世界一を決める大会―。これほど大きな夢をもたらす大会を主催し、なおかつ組織を維持し、世界にさまざまな支援をする資金を得ながら、何をもって選手の健康を犠牲にしてカネをかせごうという新大会をつくる必要があるのだろうか。

 FIFAの大きな歴史の転換点は、1974年のジョアン・アベランジェの会長就任だった。それまで純粋に「サッカーの保護者」だった組織を、新会長就任とともにコマーシャリズムと結びつけさせ、さらにその後継者のブラッターがテレビマネーを引き込んで、FIFAは「ビッグビジネス化」への転換に成功する。

 「アベランジェ=ブラッター時代」は、ビッグビジネス化の必然として広範囲の金銭的不正の横行を招き、2015年に破綻した。しかし彼らの時代には、少なくとも「サッカーの世界化」を推薦し、「サッカー文化の保護」はしようとしてきた。ブラッターは最後まで「人による判定」の支持者であり、最後に「ゴールライン・テクノロジー」は認めたものの、それ以外のテクノロジー導入は拒否し続けた。

 しかしインファンティーノは十分な準備時間もないままにビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)の導入を強行し、ワールドカップを誰がどう考えてもおかしい48チームにし(これも収入を増やすことが目的である)、さらには欧州のビッグクラブを利用して、ただただ「カネ」を追っている。インファンティーノの元で、21世紀のサッカーはどんな方向に進んでいくのか、危機感をもたない人がいるだろうか。

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