大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第97回「出してくれたらお返しするのがマナー?」(3)「フェアプレーの悪用」に敢然と立ち向かったJリーグ監督の画像
Jリーグからも、フェアプレーの意味が発信されている 写真:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は「サッカー独特の『フェアプレー』」。

■始まりはブラジル?

 ドイツのブンデスリーガでは、同じようなケースで得点してしまったチームの監督が自チームにオウンゴールを指示し、実行させたことがある。こう見ると、「ケガだと思ったら外に出し、再開時にはスローインを相手に返す」という慣習は世界に広がっているようだ。

 だがそれがいつ誰によって始められたのか、私は過去にもずいぶん調べたのだが、残念ながら現時点ではまだそうした資料を見つけることができないでいる。どなたか、何かヒントになるようなものでも知っていたら、ぜひ教えてほしい。

 ただ、私の感覚では、これは欧州で始まったことではない。少なくとも、イングランドでないことには自信はある。イングランドのサッカーの文化を考えれば、ケガをした選手を乗り越えてでもゴールを奪い合うという思想があるように思うからだ。

 なんとなくだが、南米、それもブラジルではないか―、私はそう思っている。ブラジル人たちは勝負に徹底的にこだわり、相手だけでなくときにレフェリーを欺く行為も是とする国である。だが同時に、相手チームの選手たちも「サッカーの仲間」と思いやることでも世界に抜きんでた国なのだ。いつからかブラジルで始まり、広まった習慣が、1980年代以降、ブラジル選手が欧州で活躍するようになって、世界に広まったのではないか。それが私の「妄想」である。

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