■影山監督が訴えたかったこと
当時のJリーグでは、「フェアプレーの慣習」を悪用して時間かせぎに使う行為が横行していた。相手にイエローカードを出させるために倒れたまま「重傷」を装う選手もたくさんいた。選手の「セルフジャッジ」でたびたび試合が止まり、実際のプレー時間が短くなってしまうことも大きな問題点だった。影山監督はこうした行為がサッカーに及ぼす害を考え、「出すな、返すな」と指示したのだ。すばらしい見識であり、意志の強さだ。
現在のJリーグでは、多少のファウルでも笛を吹かず、プレー続行をうながすレフェリングによってけがを装う行為はずいぶん減った。「ドロップボール」に関するルールが2019年に大きく改正され、ボールをもっていたチームに渡すことになったことで、レフェリー自身がより「気楽に」プレーを止められるようになったことも大きいかもしれない。
そうしたなかでは、選手たちが自主的にボールを出してプレーを止める行為も、影山監督が怒りを感じた時代ほど容認し難いものではなくなった。だがそんなときに今回の福岡の得点のようなことが起こらないよう、反則ではなくても、いちじるしくアンフェアと感じたときにはレフェリーが試合を止められるなど、何らかのルール上の対応も必要なのかもしれない。