■ニュージーランドの本来のスタイルに加え、丁寧なスカウティング、日本の疲労も重なり流れが相手に……
ニュージーランドについてさらに言うと、彼らはファウルで止めるのも非常にうまかった。日本の距離感の分断にも、試合の流れの分断にも言えることですが、ファウルを効果的に使っていました。4人の選手が警告を受けていますが、退場者が出ないように誰がファウルするのかも考えていたように感じました。
ファウルで試合が止まる回数が増えれば増えるほど、試合のリズムやテンポが上がりません。そういう意味でも、この五輪で一番やりにくい相手だったと思います。
客観的な力関係から判断すれば、「日本が攻めあぐねた」という見えかたになるでしょう。ただ、ビルドアップをマストとせず、長身FWクリス・ウッドへロングボールを当てるのは、ニュージーランドのそもそものスタイルであり、それにプラスして日本を丁寧にスカウティングし、さらに言えば日本の疲労感も重なって、ニュージーランドへどんどん流れが傾いていったという試合でした。日本がやられたら嫌なことがそのままニュージーランドの得意なスタイルにピタリと合致してしまった。そういう試合だったと思います。
もうひとつ付け加えておくと、3・3・2・2のチームとも、4・4・2で中盤がダイヤモンド型のチームとも、五輪では対戦していません。世界的にも採用するチームがそこまで多くないシステムなので、過去のテストマッチでも、個人レベルでも、どこまで経験があったか。相手に優位に働く要素が重なり、90分以内で、延長戦で決着をつけることはできなかった。
そのうえで言えば、ニュージーランドは好チームでした。スタイルの相性もありますが、日本にリズムを作らせないことを徹底し、基本的なことができていて、戦術的にも3・3・2・2から4・4・2へスムーズに変化できていました。
攻撃がなかなか機能せず、訪れたチャンスで得点できず、ゲームの主導権を相手に少しずつ持っていかれた。時間が経つにつれて重苦しくなっていたなかで、最後まで崩れなかった守備陣の耐久力は称賛に値します。主将でCBの吉田麻也を中心に、「今日はうまくハマらないな、おかしいな。でも、最後にやられなければいい」という考えかたに切り替えたのでしょう。この「割り切り」をできるかどうかが、トーナメントでは非常に大きなポイントだと思います。
五輪やW杯のような戦いは、攻撃だけでは勝ち抜けません。攻撃は水物と言われるように、対戦相手によって変化しやすく、見込みどおりにいかないことも多々ある。それでも守備が耐えれば負けないということを、この日の日本は体現してくれました。GK谷のPK戦でのストップも含め、最後まで失点をしない守備が勝利を引き寄せたと言えるでしょう。この試合の守備陣は、賞賛されるべき出来でした。