■メキシコ戦での胸のすくような完勝劇
開幕した東京オリンピック。金メダル獲得を目指しているサッカーのUー24日本代表は南アフリカに続いてグループ最強と言われるメキシコにも勝利。2試合終了時点で勝点を6として、グループリーグ突破に王手をかけた(フランス戦では1点差負けでも勝ち抜けが決まる)。
メキシコ戦は、まさに理想的な展開だった。
右サイドで酒井宏樹からの縦パスを追った堂安律が抜け出し、ゴール前で林大地が右から左へのダイアゴナルなフリーランニングで相手DFを引っ張って空けたスペースに走り込んだ久保が左足先を伸ばしてダイレクト・シュートを決めて、開始6分に早くも先制。
さらに、9分にはメキシコのDFセサール・モンテスがMFのカルロス・ロドリゲスに付けたボールに対して田中碧がプレッシャーをかけ、こぼれたボールを拾った相馬勇紀が林とのワンツーでペナルティーエリア深くに持ち込んでクロスを入れた瞬間、後ろから追ったモンテスがファウルを犯して、VAR(オンフィールドレビュー)の末、日本にPKが与えられた。このPKを堂安が豪快に蹴り込んで、日本は11分までに2点をリードしたのだ。
その後は日本の守備がしっかりとメキシコの攻撃を押さえた。メキシコのエース、ディエゴ・ライネスに対しては左SBの中山雄太とプレスバックして守る相馬が挟み込むようにして守り、MFの遠藤航と田中は中盤でのデュエルを制し、さらにワントップの林が前線からボールを追い回してメキシコの攻撃を限定した。そして、メキシコが入れてくるクロスやロングボールはCBの吉田麻也、板倉滉がすべて跳ね返す。
全員が、しっかりとそれぞれに役割を果たすことによってメキシコに大きなチャンスを作らせなかったのだ。ゲームとしては「日本の完勝」だった。
これまで、あらゆる年代でメキシコに対しては苦しい戦いを強いられてきた。
ロンドン・オリンピックで決勝進出を阻まれた相手もメキシコだったし、昨年の秋にオランダとオーストリアで行った一連の強化試合で日本代表(A代表)はアフリカ勢を連覇するなど素晴らしい内容の試合をしたが、11月の最後のメキシコ戦では完敗を喫した。
メキシコと日本はワールドカップで何度もラウンド16まで進みながら、どうしてもその先に進めないという同じような位置にある。そのメキシコに、日本はこれまでずっと劣勢に立たされていたのだ。
その意味で、東京オリンピックでのメキシコに対する勝利は貴重な経験となるだろう。