■実力ではまだメキシコに追いつけず

 しかし、試合としては完勝ではあったが、日本の実力がメキシコを上回ったわけではけっしてない。

 そのことを痛感させられたのが後半の戦いだった。

 後半に入っても日本は51分に遠藤が持ち上がったボールを久保が右足でシュートするなど何度かチャンスを作っていたが、次第にメキシコがボールを握る時間が増えていった。

 それでも、68分には田中からの好フィードを追った堂安が抜け出したところをファウルで止めたホアン・バスケスが一発退場となり、日本は数的優位に立った。2点リードしているチームが数的優位に立てばゲームは決まったようなもの……となるはずだった。

 ところが、その後も10人のメキシコがボールを握り続け、日本は前線にフレッシュな選手を投入して相手ボールを追い回したものの、メキシコのポゼッションを止めることができなかった。そして、守備陣の頑張りでなんとか耐えていたものの、85分にはロベルト・アルバラードの蹴ったFKが直接(GKの谷晃生の足に当たって)ゴールに飛び込み、日本は1点差に詰め寄られたのだ。

 FKからの失点はある意味で“事故のような”失点ではあったが、あれだけ自陣に押し込まれていてはいつかは“事故”が起こってしまう。その意味では必然の失点でもあった。

 1人少ない状況で、日本のストロングポイントであるはずの前線からのプレッシャーや遠藤、田中のスクリーンをかいくぐって、メキシコはしっかりとパスをつないで攻め続けたのだ。

 VARの介入によるかなり幸運なPKがなかったら、“完勝”劇は実現しなかったことだろう。チーム力としてメキシコに追い付けたわけではけっしてないのだ。

 日本の攻撃の生命線は中盤でのパス回しであり、2列目の攻撃力のはずだ。

 だが、1人少ないメキシコに対してボールを持つことができなかったし、チャンスの多くは中盤でのビルドアップからではなく、最終ラインやボランチからの縦へのボールから生まれたものだった。

 パスの精度やパススピードをさらに一段と上げていかなくては、日本はメキシコに追い付けない。ワールドカップで確実にベスト8、ベスト4に進むためには何が足りないのか……。メキシコ戦は、そのあたりの課題を突き付けられたゲームでもあった(もちろん、戦術を駆使すれば、そのメキシコにも勝てるということが証明された試合でもあったのだが)。

第2回につづく
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