■試合内容はそこまで悪くなかった大宮だが…
岩瀬監督に対する評価を難しくしていたのは、試合内容が著しく悪いわけではなかったことだ。
シーズン開幕戦はアウェイで勝利し、2節のヴァンフォーレ甲府戦から3連敗を喫したが、5節のV・ファーレン長崎戦では4対0と快勝した。J1昇格目ざすライバルを、ホームで粉砕した。
長崎に勝利した翌6節は、開幕5連勝中のFC琉球とアウェイで引分けた。続く7節のアウェイゲームでも、白星先行のブラウブリッツ秋田と引分けた。秋田はJ3からの昇格クラブだが、ホームで京都を退けていた。長崎戦を含めると3試合連続となるクリーンシートでの引分けは、それなりに評価できるものだったと言っていい。
7節から喫した3連敗も、完敗はひとつもない。すべて1点差負けだった。「ひとつ勝てば流れを変えられる」との希望的観測を、どうにかして保つことのできる試合が続いていた。
10節を終えて2勝2分6敗の21位に沈む時点で、クラブは声明文を発表する。「7月の中断期間を迎えるまでが最大の正念場と捉え、シーズンの折り返しを迎える時点で『J1昇格を狙えるポジションを目ざす』とした。
今シーズンのJ2は東京五輪開催に伴い、7月18日の第23節後に3週間の中断期間が設けられている。そこまでを期限としたわけだが、11節以降の試合からも前向きな変化を感じることはできなかった。
11節の東京ヴェルディ戦は先制しながら引分け、12節の新潟戦も2対1から逆転負けを喫した。
決定的だったのは13節のザスパクサツ群馬戦だった。ともにJ3降格圏に沈むサバイバルマッチでも、1点のリードを守り切れずに後半アディショナルタイムに追いつかれてしまった。もはや「勝てば流れが変わる」との期待を抱くのは難しく、翌節もホームでファジアーノ岡山相手に無得点引分けとなり、フロントは新たな体制への移行を急いだ。15節のギラヴァンツ北九州戦に勝利していたとしても、岩瀬監督の解任は避けられなかっただろう。
クラブは5月25日に岩瀬監督と西脇フットボール本部長の解任を発表し、「シーズンの折り返しの段階での一桁順位を目ざす」と目標を下方修正した。佐々木新監督のもとで順位をあげていくことに取り組みながら、クラブのターゲットにあった新監督を探していくことになる。
しかし、15節終了後まで監督交代を引っ張ったことで、暫定指揮の佐々木監督はもちろん後任監督は、「すぐに結果を残さなければいけない」というプレッシャーを背負う。交代のタイミングを見極めるのは大事だ。しかし、結果として決断を先送りにすると、そのぶんだけ挽回するのは難しくなる。