■思いがけない水入り

 川崎のパスワーク、なかでもこの日「アンカー」としてプレーしたMF田中碧の自在のゲームメークに守勢に立たされながら(当然、福岡は田中へのパスコースを消そうと渡が奮闘していたが……)、福岡の旺盛な闘志は衰えることはなく、先制点を取られても堂々と渡り合っていた。

「このままでは危険ではないか……」。前半が終わったとき、私は家本主審のレフェリングについて考えていた。このまま前半と同じような判定が続いたら、両チームとも熱くなり、後半はラフな応酬がさらに増える、大きなケガにつながるのではないかと懸念したのだ。

 だが、思いがけないものが両チームの選手だけでなく、家本主審の頭も冷やした。「雷雨」、というより、「雷雨の予報」である。ハーフタイム入りしてしばらくすると、「雷雲が近づいているので、後半のキックオフは20時26分になる」というアナウンスが流されたのだ。中途半端な時間だが、19時03分のキックオフで、前半はサロモンソンの同点ゴールまで約3分間追加された。後半のキックオフは前半終了の15分後ということになっているから、本来は20時06分。「20分間遅らせる」という意味だった。

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