川崎対福岡「サッカー批評」の醍醐味(2) 「川崎2点目からの40分間」こそが勝負の分かれ目の画像
田中碧選手(川崎フロンターレ) 撮影/中地拓也

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そこには、人に語りたくなるゲームがあった――。結果しか知らない人に、この試合の素晴らしさをどう伝えたらいいだろう。まっさらだったゲームが両チームの間で左右に動き、上下に起伏して、90分+アディショナルタイムの時間が流れると、勝者と敗者に分かれていた。それだけのことだけれど、人に語らずにはいられない内容がぎっしり詰まっていた。4月14日に等々力競技場で行われた試合の「勝負の分かれ目」について考えた。

■前半アディショナルタイムに同点ゴール

 そのうちあまりにファウルを取らないので、「これはどう?」と、家本主審に挑戦するようなプレーまで出始める。福岡DF奈良が川崎MF遠野に背後から体をぶつけ、ようやくファウルの笛が吹かれる。アディショナルタイムにはいってすぐ、ファウルを繰り返す福岡FW渡を呼び止め、家本主審は「あそこでも、ここでも」と指さしながら注意を与える。繰り返しのファウルなら、イエローカードではないか。

 こうした一連の出来事のなかで、福岡の同点ゴールが決まる。前半のアディショナルタイムにはいって1分、渡の単独突破に対応していた川崎DF谷口彰悟のプレーがファウルに判定され、なんとイエローカードが示される。たしかに渡は谷口と接触して倒れたが、それはボールに対応するときに流れた谷口の足にひっかかったもので、手で引っぱったり、突破されるよりファウルで止めようという覚悟の上での「戦術的ファウル」などではなかったように、私には思えた。

 そしてそのFK。「前半48分」、正面やや左、ゴールから28メートル。川崎が8人もの選手でつくった「壁」の上を越して、この日大活躍の福岡DFエミル・サロモンソンが左隅に決めるのである。

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