■川崎戦の互角だった前半が示すもの
しかし、3月21日の川崎戦では、少なくとも途中までは浦和は札幌戦とは見違えるような試合ができていた。
僕が危惧していたのは、前線や中盤での川崎の激しいプレッシャーによって、浦和がボールを失って自壊してしまうのではないかということだった。横浜FM戦でも、札幌戦でも、中盤でのボールロストから再三決定的なピンチを招き、横浜FM戦では2失点につながっているのだ。当然、川崎もそこを狙ってくるであろう。
ところが、浦和の選手たちはボールを素早く動かして川崎のプレッシングをかわしてパスをつなぐことに成功したのだ。
この日の浦和の中盤は金子大毅と伊藤敦樹のボランチにトップ下の小泉によるトライアングルを基本形として、時に応じて小泉がポジションを変えて、小泉をアンカーにした逆三角形に変化したりするもので、この3人のバランスが非常に良かったのだ。
また、右SBには再び宇賀神が入ったが、この試合では攻撃に参加する回数はごくわずかで、本職のSBとして川崎の長谷川竜也と旗手怜央のサイド攻撃を抑える役割に徹していた。
「42分まで」だったとはいえ、パス回しのうまい川崎を相手にして、パス回しという同じ土俵に立って互角に戦えるチームは今のJリーグには一つもない。
川崎相手に、勝負を挑むとしたら、ボールを持たれるのは覚悟のうえでスペースを与えずに無失点で耐えて、カウンターで勝負するしかない。昨年、川崎が不覚を取った試合はほとんどがこのパターンだった。天皇杯決勝で、ガンバ大阪が接戦に持ち込んだのも、割り切って引いて守ってスペースを消して戦ったからだった。
だが、この日の浦和は(42分までは)川崎を相手にパス回しで対抗したのだ。
もちろん、49分にレアンドロ・ダミアンにバイシクル・キックで追加点を許してからは、まるで気持ちが切れてしまったようにマークが甘くなり、そしてスピードについていくことがまったくできなくなってしまった。良い時と悪い時の差が、あまりにも大きすぎるのは問題だが、しかし、今の段階では前半だけでも川崎と互角に戦えたことをプラスに考えるしかないだろう。