「成功率80%の恐怖」――。映画のタイトルのようじゃないか。PKをめぐっては、数々のドラマが生まれてきた。成功と失敗は、天国と地獄。イビチャ・オシム監督はけっしてPKを見なかった。PK戦になるとベンチから姿を消して、ロッカールームでただ一人結果を待ったそうだ。
■今季、JリーグのPK数は大きく増加するだろう
日本のトップリーグとしては史上最多の20クラブで行われるJ1の開幕が2週間後に迫った。昨年までの18クラブ・全306試合から、380試合へと、24%もの試合増になる。もうひとつ、確実に増えると思われるものがある。得点? それも大いにありうるが、私がより確実に増えると考えているのがペナルティーキック(PK)だ。昨年、第1節しか使われなかったビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)が、今季は全試合で使われることになっているからだ。
ワールドカップでは、1大会の最多PKは1998年フランス大会と2002年日本・韓国大会の18回。2014年のブラジル大会は13回だった。しかしVARが導入された2018年ロシア大会では、一挙に29回に増えた。そのうち9回がVARが主審の判定に介入した結果、PKになったものである。フランスとクロアチアで争われた決勝戦、フランスの勝ち越し点が、主審も副審も見ることができなかったクロアチア選手のハンドによるPKであったのを記憶している読者も多いだろう。
J1リーグは2005年から昨年までの16シーズン、ずっと18チームでプレーしてきたが、シーズン306試合(2015年と2016年のチャンピオンシップは含まず)のPK平均は59.3回。すべての年が51回から70回の間にはいっている。1試合に対し0.19本、およそ5試合に1回のPKということになる。
今季の試合数増を考えれば、72回程度というのが通常のPK回数。しかしVARがはいることによって、80回から90回になるのではないか。2018年ワールドカップでのVARが介入してのPK数増加率(20回→29回)を考えれば、86回ということになる。今季の総ゴール数は1000点前後になると予想されるが、PKが無視のできない数であることがわかるだろう。というわけで、今回はPKについて考えてみたい。ただ、ここでは、試合中のPKだけを扱い、試合の決着をつけるための「PK戦」については、別の機会としたい。