■最後のゴールは芸術的なダイビングヘッド

 どんなときにも礼儀正しく、周囲の人への感謝を口にする寿人。12月26日に引退会見が行われたが、会場は当然、所属のジェフのクラブハウスだった。だがそこには、彼がプロとしてスタートし、プロとしての幕を引いたジェフだけでなく、その間に所属したセレッソ大阪、ベガルタ仙台、サンフレッチェ広島、そして名古屋グランパスのユニホームが、日本代表のものといっしょに飾られていた。それは尋常なことではない。プロとして生きてきた1日1日を本当に大事にした証拠だと、私は感じた。

 最後の2シーズンをジュニアユース時代から育ててくれたジェフでプレーした寿人。最後のゴール、Jリーグでの220点目は、昨年11月8日、フクアリにモンテディオ山形を迎えた試合だった。後半34分に寿人が投入されたとき、試合はすでに0−5だった。ジェフはホームのサポーターの前で蹂躙されていた。

 しかし寿人は残された時間に集中した。交代出場からわずか4分目、そのチャンスがきた。左からサイドバックの安田理大がもち上がり、相手DFと対峙、ステップを踏んでボールをわずかに外に持ち出した。その瞬間、ファーポスト前に走り込んでいた寿人は外に「プルアウェー」の動きを見せた。クロスがはいる。寿人はまだ外に走っている。ジャンプして届くかどうかのボールがくるのか——。だがボールはファーポストの前に落ちてくる。寿人は最後のところで細かくステップを踏み、ゴールに向かう。そしてその勢いをそのままロケット砲のように強烈な推進力とし、落ちてきたボールを強烈なダイビングヘッドでゴールネットに突き刺したのだ。

 そのプレーは、まさに寿人がサッカーを始めて以来、考えに考え、積み重ねてきたストライカーとしての工夫と努力の結晶だった。鮮やかなゴールの記憶を残し、寿人は舞台から下りた。

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