苦しい状況から見事に逆転したことで、中村の等々力最終戦は有終の美を飾るに十分だったかもしれないが、サッカーの神様は、最後にもう一つプレゼントを用意していた。61分、右サイドでボールを受けた14番が、中も見ずにゴール前にボールを供給すると、そこで待っていたのはFW小林悠。長年の間で培われた阿吽の呼吸で、中村のクロスをアシストに変えてみせた。
逆転勝ち、Jリーグ初得点、新人選手最多得点、ホーム最終戦でのアシスト、さらにチームとしてはJリーグ年間最多得点の記録更新――中村憲剛の等々力最終戦は、多くの“おまけ”を付けた白星となった。
試合後、ユニフォームの色にかかわらず多くの選手が中村の元に寄っては、その18年間を労った。それは、主審も変わらない。この日、笛を吹いた今村義朗主審は試合終了時点でのボールを持って中村に近づくと、それをそっと渡したのだ。