■上位3チームが揃って勝点3を積み上げ
波乱なき静かな夜だった。
今シーズン5度目の5連戦の4試合目として行なわれた11月11日の第33節は、順位が上のチームがほぼ漏れなく勝利した。13位の東京ヴェルディが7位の京都サンガを退けた一戦は例外だが、両チームの勝点差は「5」で力関係に大きな開きはない。
また、10位のジュビロ磐田対4位のアルビレックス新潟戦の引分けという結果も、磐田の潜在能力を考えれば驚きの結果ではない。90分に追いつかれた新潟からすれば、物足りない試合となったのだろうが……。
いずれにしても、首位の徳島ヴォルティス、2位のアビスパ福岡、3位のV・ファーレン長崎が揃って勝利を飾り、トップ3の順位には変動がなかった。静かな夜だった。
徳島は今シーズン初の4連勝を飾った。
栃木SCをホームに迎えた一戦は、戦前の予想どおりの展開となる。相手のハイプレスをいかに剥がすのかが、この日の徳島に課せられたテーマだった。
序盤は苦しんだ。自陣でのビルドアップでボールを引っ掛けられるシーンが散見した。栃木がもう少しうまく攻めていれば、ビハインドを背負っていたかもしれない。
それでも、チームが強みとする流動性でフリーの選手を作り出し、ボールホルダーを距離感良くサポートすることで徐々に押し込んでいく。前半のうちに得点を奪うことはできなかったものの、相手ゴールへ迫ることはできていた。
試合を動かしたのは53分だ。トップ下の渡井理己が左サイドからドリブルで仕掛け、相手ボランチのアタックを剥がしてゴール前へクロスを送る。これがオウンゴールを誘い、徳島は先制点を奪うことに成功した。
ここから両チームのベンチが交互に交代選手を投入し、チームの活性化をはかる。徳島がボールを保持し、栃木がハイプレスからのカウンターを狙う構図のなかで、75分に勝敗を決する得点が生まれた。
右サイドの岸本武流のクロスを、垣田裕暉がGKの目前でヘディングで合わせた。岸本は後半開始からの、垣田は71分からの途中出場で、チームに2点目をもたらした。実に10試合ぶりのベンチスタートだった垣田は、2試合ぶりの得点で通算13ゴールとした。
試合後のリカルド・ロドリゲス監督は納得の表情を浮かべた。
「簡単な試合でないことは分かっていたが、我々はすごくいい試合ができたと思う。狙いどおりにボールを動かしながら、相手も徐々に消耗してきたなかで、スペースをうまく作り、適切にボールを動かせた。すごくいい試合ができた」
残り9試合である。長かったシーズンも終盤が近づき、ついにゴールが見えてきた。ゴールを意識したくなる時期になってきた。それでも、キャリアハイの得点を重ねる垣田は「周りのこととか先のことは意識せずに、目の前の試合にどれだけ必死になって戦えるのかがこの先は大事になってくると思う」と話す。「首位に立っているからどうこうではなく、自分たちのパフォーマンスを出していくことが大事なのだ」というロドリゲス監督の思いを、選手たちはしっかりと受け止めている。