■スポーツが平和に結びつく理由
15シーズンの日本での監督生活のなかで、ミシャは何度もあと一歩でJリーグや天皇杯のタイトルを逃した。昨年も、札幌を初めてルヴァンカップというビッグタイトルの決勝戦まで導きながら、PK戦で大魚を逃している。この15シーズンで唯一のメジャーなタイトルは、浦和時代の2016年につかんだルヴァンカップただひとつである。
だがミシャの価値をそんなもので測るのはまったくのナンセンスだ。サッカーを心から愛し、サッカーにかかわる人びとに惜しみない愛情を注いできたミシャは、常にポジティブな攻撃的サッカーとともに、豊かな人間性によって、日本のサッカーに大きな喜びを与え、有言無言のうちに日本のサッカーに巨大な足跡を残してきたからだ。
「サッカーという自分がいちばん好きなことで仕事ができ、おカネを稼げるのは、とても幸せなことだ。私は毎日、この仕事ができる喜びを感じて臨んでいる。そしてそれがいい仕事につながるのではないかと思っている」
「スポーツは、もちろん勝つか負けるかの世界だが、私自身は、勝敗よりも、スポーツ自体のなかに楽しみや喜びがあると考えている。だからこそ、日々のスポーツが平和に結びつく。それに対し、おカネがからみすぎる現代のスポーツの世界は、けっして平和を生まない。私はそうした現状に合わせて自分自身を変えようとは思わない」
記者会見ではときおり「暴走」してしまうミシャだが、彼が15年間発信し続けてきたメッセージには、日本のサッカー、そして日本の社会にとって、もっともっと耳を傾けるべきことがある。