■ドリブル得意のGKイギータ(コロンビア)

 GKたちの見果てぬ夢とは何だろう。山岸や六反のように劇的なヘディングシュートを決めることか、セニやチラベルトのようにPKやFKでコンスタントに得点することか。

 それ以上に、機を見て攻撃に出ていき、味方とパスをかわし、ドリブルで突破して、あわよくばチームを勝利に導くゴールを決めることこそ、彼らの本当の夢ではないだろうか。それこそ、GKたちをいわれなき「疎外感」から救い出す唯一の方法であるからだ。ひとりだけ別の色のユニホームを着せられ、ペナルティーエリアという「檻」に閉じ込められているのではなく、自由に走り、チームの一員としてプレーに加わりたい――。そう思わなかったGKがいるだろうか。

 その夢をかなえたのが、1980年代から1990年代にかけてコロンビア代表で活躍したレネ・イギータだった。彼は果敢にペナルティーエリアを出てフィールドプレーヤーとしてプレーした。最後尾でパスを受け、パスをさばくというプレーだけでは満足せず、ドリブルで相手を抜き、パスを出し、リターンパスを受けて前線に上がっていった。

 ある試合でコロンビアがリードされていたとき、イギータはドリブルで右サイドを上がっていった。そして相手チームのタックルでボールがタッチラインを割った。驚きはその後だった。ゴールに戻るのではと思いきや、イギータは自らスローインし、リターンパスをもらって、なんと再びドリブルを始めたのである。彼は25年間の現役時代に41ゴールを記録しているが、こうしたプレースタイルは、1990年ワールドカップのカメルーン戦で切り返しをロジェ・ミラに奪われ、決定的な失点を喫するという、痛すぎる失敗にもつながる。

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