■田北雄気(浦和レッズ)がPKをけった理由

 ことし28シーズン目を迎えたJリーグの歴史には9人の「GK得点者」がいる。そのうち5人がロングキックがワンバウンドして相手GKの頭上を破ってゴールにはいったというもので、3人がCKをヘディングで決めた。

 2018年11月に清水エスパルスのGK六反勇治ヴィッセル神戸を相手に決めたヘディングシュートは、清水が1-3のビハインドから87分に1点を返し、後半追加タイムに左CKを六反がヘディングで決めて同点に追いつくという劇的なものだった。しかしその後、4分間のはずだった追加タイムが主審の勘違いで19分間近くになってしまい、大混乱となるなか、その感動も忘れられてしまって、少し気の毒だった。

 ロングキックでもない、CKからのヘディングでもないJリーグの「GK得点者」がひとりいる。浦和レッズの田北雄気だ。1996年11月の横浜フリューゲルス戦でPKをけり、得点を決めた。2-0とリードした状況の後半34分とはいえ、失敗したらカウンターで失点のリスクがあるPKである。それを田北にけらせた背景には、当時の浦和の情けない事情があった。

 「PKスペシャリスト」の福田正博が故障で戦列を離れていたこの年、京都サンガ戦でウーベ・バインと広瀬治が、そして鹿島アントラーズ戦ではギド・ブッフバルトが試合中のPKを失敗し、誰もける者がいなくなってしまっていたのだ。田北は落ち着いてボールをセット、GK楢崎正剛の逆をついて左隅にけりこんだ。

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