後藤健生の「Jリーグ中間報告」(2)「川崎F“新たな挑戦”の破壊力」、PCRと「拍手」の光景の画像
パススピードが格段に上がったフロンターレ川崎 撮影:中地拓也

再開して第7節がおわった明治安田生命J1は、川崎フロンターレが6連勝で首位を走り、追うガンバ大阪が2位、名古屋グランパスFC東京セレッソ大阪が同勝ち点で3位を争っている。中堅どころの組織的な守備は要注目だ。はたして、王者・横浜FMと強豪・鹿島アントラーズはどうしてしまったのか。川崎を止めるのはどこかーー。

※前編はこちらより

 Jリーグが再開されて早くも約1か月が経過した。そこで今回は、Jリーグのここまでを振り返ってみたい。ただ、まだ「総括」などすべき時期ではないので、今回は筆者がスタジアムで観戦したゲームで感じたいくつかのトピックに絞ってご紹介することにしよう。

■川崎が独走態勢を固めるか? 正確で速いパスの威力が増して、攻撃力を高めた川崎フロンターレ

 強豪チームが苦戦を強いられているのを尻目に、川崎フロンターレは着実に勝ち点を伸ばしている。2月の開幕節ではサガン鳥栖とスコアレスドローに終わっていた川崎だが、再開後は6連勝。しかも、6試合で20得点という圧倒的な数字を残しているのだ。

 2017年、18年と連覇を果たした川崎の特徴は何といってもそのパスワークにある。相手がスペースを消してきても、受け手が少しだけ位置を変えて小さなスペースに入り込むことによってフリーになってパスを受ける。こうしてゆっくりと正確にボールを回しながら、相手守備陣に隙を見つけると一気にスピードアップしてワンタッチのバスをつないで相手守備陣を切り崩してしまう。

 風間八宏前監督が確立したそんなパスワークに、鬼木達監督が守備意識と攻め鋭さを付け加えて作り上げたチームだった。

 だが、昨年は「あと1点」が取れずに勝利を逃すことが多く、勝点を伸ばせずに4位に終わった。従って、川崎にとって今年は「新たな挑戦」の年なのだ。そこで、鬼木監督はシステムをスリートップに変更し、より速くゴール前にボールを送り込むという意識を強くした。実際、パスの正確性はそのままにパス・スピードが加わっていることで攻撃力がかなり強化されている。

 試合前のウォーミングアップでは、どのチームもいわゆる「鳥かご」と呼ばれるボール回しを行うが、そうした際でも今シーズンの川崎はとにかくスピードのあるパスを使って激しい動きをしている。「パス・スピード」に対する意識付けが徹底しているのだろう。

 かつては、ゆっくりとしたパス回しだけでは崩せない時には中村憲剛が相手の守備の穴を狙う一発のキラーパスで守備網をえぐって勝負をつけることが何度もあった。だが、中村も間もなく40歳。さらに昨年11月には左膝前十字靱帯損傷という大けがを負ってまだ復帰に至っていない。しかし、今の川崎にとっては中村憲剛の不在も大きなマイナスとはなっていない。何しろ、今ではどの選手でも中村憲剛ばりのロングボールを駆使できるようになっているのだ。

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