■カウンター志向への流れ
堅守速攻型としては名古屋グランパスも俊足FWを生かした、長谷川健太監督らしい典型的な堅守速攻型で、リーグ戦後半は失速して最終順位は6位に留まったが、前半戦では首位争いに絡み続けた。
そのほか、サンフレッチェ広島や浦和レッズ、鹿島アントラーズなど、今シーズン上位を占めた各チームはいずれも「ポゼッション志向」ではなく、「カウンター志向」のチームだった。Jリーグの流れが、ここ数年とは明らかに変わりつつあるようだ。
この数年、“究極のポゼッション・サッカー”を武器にJ1リーグをリードし、一昨年は勝点92を獲得して圧勝した川崎フロンターレは、昨シーズン以来かつてのような圧倒的得点力が影を潜め、苦しい試合の連続で今シーズンは8位に終わった。
また、昨年の覇者である横浜FMも準優勝に輝いたものの、リーグ戦終盤では失速して、最終節を待たずに神戸の優勝を許してしまった。
川崎は、三笘薫や旗手怜央、守田英正、田中碧などの主力級が相次いで海外に移籍した穴を埋めきれなかったことも苦戦の原因だったし、今シーズンはマルシーニョやレアンドロ・ダミアン、ジェジエウといったブラジル人選手たちが相次いで負傷欠場した影響もあった。
そのため、パスの精度も全盛期に比べれば落ちてしまった。
同時に、川崎が圧倒的な力を発揮していたJリーグで各チームの「川崎対策」が進んだことも苦戦の原因だった。
前線からチェックを入れて川崎の選手が自由にボールを動かすのを阻止すると同時に、後方でスペースを作って川崎に利用されるのを防ぐための戦い方が各チームに浸透してきた。
主力の流出、欠場によって川崎のパス・サッカーの精度が落ちたのと同時に、対戦相手の「川崎対策」も進んだ……。それが、川崎苦戦の原因なのだろう。