川崎フロンターレや横浜F・マリノスの攻撃性を飲み込んだ「カウンター志向」への流れ【Jリーグの2023年シーズンを振り返る】(1)の画像
2023年のJ1を制したのはヴィッセル神戸だった 撮影:中地拓也

 12月3日をもって、2023年のJリーグが全日程を終えた。ヴィッセル神戸の優勝や東京ヴェルディの16年ぶりのJ1復帰などの結果が出たが、Jリーグには数字だけでは測れない変化があった。2023年のJリーグを、サッカージャーナリスト後藤健生が振り返る。

■神戸の優勝が象徴するもの

 2023年のJリーグの全日程が終了した。

 2017年に川崎フロンターレが初優勝を飾ってから6年間にわたって川崎と横浜F・マリノスの神奈川県勢によって独占されていたJ1リーグ王者のタイトルがヴィッセル神戸に渡った。

 単に優勝チームが変わっただけではない。

 川崎と横浜FMが攻撃的サッカーで圧倒的な強さを発揮していた最近数年のJリーグのサッカーに変化があり、2023年には堅守速攻型、カウンター・プレッシング型優位のシーズンとなり、神戸の戴冠はそれを象徴するような出来事だった。

 かつては「バルセロナ化」を標榜していた神戸は、吉田孝行監督の下でサッカー・スタイルを大きく転換。前線から守備をしかけて高い位置でボールを奪い、手数をかけずに仕留めるサッカーで優勝を勝ち取った。

 こうした中でアンドレス・イニエスタも出場機会を失って神戸を離れる決意をせざるを得なかったのだ。

 得点王に輝いた(アンデルソン・ロペス=横浜FM=と同率)大迫勇也武藤嘉紀酒井高徳山口蛍といったベテラン勢の能力を見事に生かし切ったことも勝因だった。

 ベテランが多かったため「疲労の蓄積」が懸念されたが、記録的な猛暑に見舞われた夏場も無事に乗り切って、シーズンの最後まで動きを落とすことがなかったのはチーム・マネージメントの賜物であり、新しいスタイルを確立したことも含めて吉田監督の手腕は確かなものといっていい。

 ベテラン勢に加えて、佐々木大樹を初めとして若手も力を付け、また、下部組織も充実しつつあるので神戸はこれからもJリーグの強豪の一角としての地位を確立したと言っていいだろう(チームに馴染み始めていた齊藤未月の重傷は残念な出来事だった)。

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