■終盤は5バックで「勝利の方程式」へ

 2対1とした町田だが、その後は岡山の反撃に遭う。相手の選手交代と立ち位置の変更に対応しきれず、際どいシーンを作られる。65分には右サイドからの突破を阻止しようとしたチャン・ミンギュが、スライディングをした際にハンドを取られてしまう。PKである。

 2対2の同点にされてしまうのか。PKを阻止して1点差を保つのか。岡山に傾いている試合の流れを考えても、このPKは勝敗を分けるものだった。

 ここで輝いたのがGKポープ・ウィリアムだ。FW櫻川ソロモンのPKを読み切り、右に飛んでセーブする。

 守護神がビッグセーブを見せた直後、黒田監督が交代カードを切る。MFバスケス・バイロンとエリキを下げ、FW荒木駿太とFWミッチェル・デュークを投入する。試合の流れを一気に手繰り寄せる交代だ。

 果たして選手交代直後の71分に、貴重な追加点が生まれる。右サイドから鈴木がロングスローを入れると、ニアサイドへもぐり込んだMF松井蓮之がヘディングで後方へ流す。このボールを平河が頭でプッシュした。得点源とするロングスローで、貴重な3点目を奪ったのだった。

 80分過ぎから岡山がCB柳育崇を前線へ上げ、パワープレーを仕掛けてきた。黒田監督は相手の狙いを見定め、86分に藤尾を下げてDF松本大輔を送り込む。システムを3バックに変更した。

 夏の移籍市場でサガン鳥栖から獲得した松本は、24歳のDFだ。22年はツエーゲン金沢、今シーズンはレノファ山口FCでプレーしており、183センチの高さを持つ。ベテランの深津康太が出場機会を求めて移籍したCBのポジションに、すぐに新戦力を補強して選手層の厚みを確保していた。

 守備時は5バックで対応した町田は、岡山の攻撃を跳ね返して3対1のまま試合終了のホイッスルを聞く。シーズン18勝目を記録し、他チームより1試合消化が少ないなかで勝点を「60」に乗せた。

 次節は2位のジュビロ磐田とホームで、その翌節は3位の清水エスパルスとアウェイで対戦する。さらに8月最後の32節は、3連勝でじわじわと順位をあげているモンテディオ山形と対峙する。

 磐田戦は翁長が累積警告で出場停止だ。ここまで全試合に先発してきた左SBの不在を、黒田監督はどのようにして乗り切るのか。妙手で勝利を引き寄せてきた指揮官のマネジメントに注目だ。

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