■W杯後の変化はサイドバックの立ち位置に
ウルグアイ、コロンビアと対戦した3月のテストマッチで、日本代表の森保一監督は何を求めたのだろう。
戦術的には「遅攻からの崩し」である。ハイプレスとショートカウンターの組合せから相手ゴールへ迫るだけでなく、ボールを保持した状態から決定機を生み出し、ゴールを奪うことを、2026年W杯までの課題としている。
戦略的には「新戦力のテスト」である。
2010年や14年のW杯から代表入りしてきたGK川島永嗣、DF長友佑都、DF吉田麻也、DF酒井宏樹が外れ、GK権田修一とMF柴崎岳もメンバー外となった。その一方で、国際Aマッチの出場経験がない5選手が招集され、同1試合出場のDF菅原由勢、同2試合のDF橋岡大樹、同3試合のMF西村拓真がリストアップされた。26人のうち16人がカタールW杯のメンバーだったが、それ以外の10人はいずれもフレッシュな人材だったのである。
では、戦術と戦略の達成度はどうだったのか。
遅攻からの崩しを実現する具体策として、新任の名波浩コーチを中心に「サイドバックが内側のレーンに立つビルドアップ」にトライした。両サイドバックがボランチのようなポジションを取るのだ。
24日のウルグアイ戦では、サイドハーフとのスペースの使い分けに課題を残した。そのためか、28日のコロンビア戦では「必要に応じて内側のレーンを使う」という現実的な対処に落ち着いていた。開始早々にMF三笘薫のヘディングシュートで先制したことで、「相手の出かたを見ながら」の対応になったところもあっただろう。
この戦略のポイントとなるサイドバックは、菅原が2試合連続で右サイドを担い、左サイドはウルグアイ戦がDF伊藤洋輝、コロンビア戦がDFバングーナガンデ佳史扶が先発に指名された。
右サイドでは橋岡も起用されたが、プレータイムはわずかだった。パリ五輪世代のDF半田陸は、出場機会がなかった。
菅原が2試合連続で先発したのは、20年10月以来の出場だったウルグアイ戦のパフォーマンスが、森保監督を納得させるものだったからかもしれない。内側のレーンを意欲的に活用しただけでなく、前半にタッチライン際からFW浅野拓磨へ決定的なスルーパスを通した。後半に生まれた西村の同点弾を巻き戻すと、菅原のタテパスがMF伊東純也を走らせている。伊東のアシストから、西村が蹴り込んだのだった。
一転、コロンビア戦の菅原は、守備に追われた印象があった。1点リードの33分に喫した同点弾は、彼のサイドを破られたのがきっかけだった。
コロンビア戦で国際Aマッチデビューを飾ったバングーナガンデは、インテンシティーの高い攻防のなかで致命的なミスを犯すことはなかった。この日は限定的だった攻撃へのかかわりは、今後の課題となるだろう。無難な第一歩を記した、と言うことはできる。