■期待のかかる生え抜きFWの台頭
そう考えると、やはり理想のチームはできあがってしまっているのかもしれない。だが、現状維持は理想のチーム運営とはほど遠い。つまり、「理想を超える」ことが理想、という矛盾のような問題克服が求められているのだ。
突破口は、左ウィングか。スーパーカップではチャナティップが先発起用され、昨季途中にやって来たマルシーニョもいるが、期待したいのは宮城天だ。下部組織で育った生え抜きドリブラーが、本格的にポジション争いすることを期待したい。
宮城の「突破」には、他の利点もある。三好康児と板倉滉は、下部組織のU-12チームの栄えある1期生だった。見事にヨーロッパへと羽ばたいていったが、この2人は川崎で主力としてプレーすることなく、期限付き移籍していた他クラブでのプレーを最後に、欧州へと渡ったのだ。一度は戻ってきた宮代大聖も、今季はサガン鳥栖でプレーと、2シーズン連続で期限付き移籍に出されている。武者修行は悪いことではないが、生え抜きが川崎で試合に出ながら育つ方が理想的だろう。今季の宮城は、その先例になることができる。
窮余の策から始まった起用だが、昨季の旗手怜央のサイドバックでのプレーは、他クラブには未知の脅威となったはずだ。無得点で負けたスーパーカップでは、川崎相手に守り切るのは夢ではないことを、他チームに知らしめてしまった。目標はリーグ3連覇に他ならないが、これまで2連覇は何度かあっても、3連覇は鹿島アントラーズが1度達成しただけ。非常に難しいタスクであることは、歴史が物語っている。
鬼木監督のアイディアか、突然のブレイクか、今の川崎には「最強チーム」を揺るがす選手の台頭が求められている。
タスク:「リーグ優勝」
達成難度:★★★★★