■追いかける展開で最後の交代が左SBでは…

 10月のサウジアラビア戦は、伊東純也が出場停止だった。中国戦で好パフォーマンスを見せた久保は、所属クラブで負傷したために招集できなかった。堂安はひざの違和感で離脱した。2列目は右から浅野拓磨、鎌田、南野拓実の並びとなった。

 連勝スタートのサウジに勝点で並ぶために、森保監督は敵将エルベ・ルナールより先に動いた。後半14分に南野から古橋、浅野から原口へのスイッチである。

 先制された直後の後半28分には、柴崎岳と鎌田を下げて守田英正とオナイウを送り込んだ。システムはオナイウと大迫の2トップとなる。

 しかし、同点に追いつくことはできない。

 森保監督が5枚目のカードを切ったのは、後半アディショナルタイムだった。動きが遅い。しかも、交代の意図が不明瞭だった。森保監督は長友を下げ、中山雄太を送り込んだ。攻撃的なカードとして三好康児が残っていたが、左サイドバックを入れ替え、なおかつパワープレーをするわけでもなかった。

 失点につながるパスミスをした柴崎に、0対1の敗戦の責任を押し付けるのは簡単だ。しかしより根本的な問題は、チームとして打開策を持てていないことである。

 森保監督は「チームとしての攻撃の優先順位として、奪って素早く相手のゴールに向かっていく。それができなかったときにはマイボールを大切にして、ボールを動かし保持しながら、ゲームをコントロールしながらチャンスを作っていく」というコンセプトを掲げているが、具体的なイメージが見えにくい。

 中国戦で大迫の決勝点をアシストした伊東のように、局面を打開していく「個」の力はある。ただ、「個」のパフォーマンスはコンディションに左右されやすい。9月のオマーン戦、10月のサウジアラビア戦と連戦のアタマを落としたのは、短い準備期間でコンディションが万全でなかったことが関係している。連携や連動がオートマティズムではなく、チームのパフォーマンスがコンディションによって大きく左右されているのだ。

 サウジアラビア戦までの選手起用は、結成当初からの序列に基づいていた。しかしそれによって、チームが硬直化していた印象は否めない。システムも含めて、相手に読まれやすくなっていたのだ。

 この時点で、チームを浮上させる手立ては見当たらなかった。サウジアラビア戦の4日後に行なわれるオーストラリア戦で勝利を逃したら、監督交代は避けられない。日本は、森保監督は、ギリギリまで追い詰められていた。

森保一監督による2つの勝負手・後編へ】
(3)へ続く
PHOTO GALLERY 全ての写真を見る
  1. 1
  2. 2