■ダブルタッチでパスを通す

 ペナルティエリアの目の前でボールを奪った土居だが、ダンクレーと藤田が素早く寄せて前への突破を阻む。さらに、原川力も斜め後ろにポジションを取って、後ろに戻すコースも切られる。せっかくのチャンスも生かせないかのように見えたが、土井は背中に「8」を背負う男だ。

 素早いダブルタッチで、原川とダンクレーの間を通すような形で左斜め前にパスを出す。そこに走りこんだのは、荒木。ボールを受け取ると、前方に複数人が構え、さらに後方から勢いよくセレッソの選手が戻ってきたのも苦とせず、右足でゴールにボールを流し込んだのだ。そのシュートを撃つ際のステップとコースは荒木のサッカーセンスを感じさせる高難度のもの。鹿島は見事に先制点を奪ったのだ。

「キツい時間帯だったので決めてくれて良かった」

 試合後の荒木は、味方選手からこう言われたことを明かした。直前の激しいプレッシャーを見せた鹿島イレブンだったが、連戦続きで疲労がたまっていたのだ。ただ、土居と荒木の信頼と関係性がこのゴールを生んだことを考えれば、同じメンバーでやることのメリットも確かにある。

 これで荒木のリーグ戦ゴール数は「6」となり、チームのトップスコアラーに立った。上田綺世の5得点、土居と町田浩樹の4得点を上回る数字である。荒木は3月13日までに4得点を奪っていたが、5月15日の横浜Fマリノス戦まで2か月間もリーグ戦のゴールがなかった。これでホーム2戦連発ということになる。

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