■問われるボールホルダーへのアプローチ法

 一方で今季は、堅守も光っていた。鹿島戦の前の時点で今季のリーグ戦の失点数は12試合で「8」。1試合平均にならせば「0.666…」で、サガン鳥栖の「0.4」に次ぐ守備の堅さ(15試合6失点)。川崎の「0.75」(16試合12失点)よりも、“史上最強の盾”と称された名古屋グランパスの「0.71」(17試合12失点)よりも堅い守備を誇っていた。

 トリコロールにとって課題とされた攻撃と守備のバランスの最適解が見つかったかに思われた中での、カシマスタジアムでの沈没だった。

 問題は、この堅守の攻略法が他チームにさらされたことだ。今後、マリノスと対戦する相手は裏を狙った攻撃を仕込んでくる可能性がある。直接狙うやり方もあれば、一度サイドの裏を狙うやり方もあるだろう。かといって、それを恐れて最終ラインを低く設定すれば攻撃に転じる際の迫力を欠くし、そもそも前進プレスができなくなる。それではと、相手のボールホルダーへの圧力を弱めれば、マリノスのコンセプトの1つを失うことになる。相手チームに考える時間とボールを持つスペースを与えないことで、飲み込んでいくというものだ。

 アンジェ・ポステコグルー監督は攻守のバランスを求め、4バックだけでなく3バックを試すなど試行錯誤を重ねてきた。この指揮官にとってやりたいサッカーは同じ。ゴールからの逆算も同じ。そこにどう帰結させるかという冒険でもあった。

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