サッカーの賢者・湯浅健二さんに聞く「Jの面白さ」(1) 「仙台・手倉森監督も湘南・浮嶋監督もサッカーの本質を理解している」の画像
湯浅健二さん 写真/大住良之

みなさんはどう感じているだろう。Jリーグは以前よりも活気にあふれ、各段に面白くなっているのではないか。その理由を探るべく、サッカーに深い愛情をそそぐ湯浅健二さんに話を聞いた。浮嶋敏湘南ベルマーレ)、手倉森誠ベガルタ仙台)、アンジェ・ポステコグルー横浜F・マリノス)、金明輝サガン鳥栖)、長谷部茂利アビスパ福岡)、片野坂知宏大分トリニータ)、マッシモ・フィッカデンティ名古屋グランパス)、鬼木達川崎フロンターレ)、リカルド・ロドリゲス浦和レッズ)ら、注目すべき監督への率直な評価に対話は弾んだ。深い洞察に基づく刺激あふれる賢者の言葉に耳を傾けよう――。

■攻撃のわくわく感が急速に増している

  新型コロナウイルスの脅威にさらされたなかでの2シーズン目。だが全般的に見て、Jリーグのサッカーには、以前よりはるかに躍動感があると感じられる。

 ひとつは「たくましさ」を目的としたレフェリングの変化が理由だろう。多少ファウル気味の接触があってもレフェリーたちは笛を吹かず、プレー続行をうながす。3年間海外駐在していて帰国し、久々にJリーグの会場に足を運んだファンなら腰を抜かすかもしれない。それほどこの数年でレフェリングが変わり、選手たちもそれに対応して戦う姿勢を保とうとしている。

 だがそれだけでは理解できない。多くのチームが前線から果敢にプレスをかけ、ボールを奪うと、後方から何人もの選手が積極的に飛び出して攻撃の人数を増やし、ゴールに迫っていく。その攻撃をゴールとして結実させられるかどうかで勝敗が分かれ、順位に差がついているものの、「志」だけでなく、攻撃のわくわく感は、多くのチームで急速に増しているのだ。

 降格がなかった昨季なら理解はできた。恐怖から解き放たれ、多くのチームが、多くの監督がそうしたサッカーにチャレンジした。だが、今季その傾向が止まず、むしろ加速しているように感じるのはなぜだろう。J1の約3分の1、13節、130試合(消化試合数はばらばらだが、なぜか5月9日に第13節を終えた時点できっちり130試合となった)の時点で、友人のジャーナリストであると同時に、ドイツの「スペシャルライセンス=プロサッカーコーチライセンス」をもつプロサッカーコーチ湯浅健二さんに聞いてみた。湯浅さんの答えはとてもシンプルだった。

「選手たちが楽しさを知ってしまったからですよ」

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