■試合中のピッチに響いた「あんたが大賞」のメロディ
とはいえ、川崎がゲームの流れを握り、ボールを保持している以上は安心かと思われた。等々力競技場には「あんたが大賞」の受賞の際に流れる練習メロディが繰り返し流れるなど、誰もが川崎の勝利を確信した。
しかし、74分に仙台が追いつく。気田亮真のドリブルシュートを許し、GK丹野研太が弾いたもののこぼれ球を流し込まれたのだ。
残りは16分。鬼木達監督は、連戦を戦い抜いていた田中碧を下げてフレッシュな遠野大弥を投入し、さらに小林に替えてチーム得点王のレアンドロ・ダミアンを送り込んだ。その直後に遠野のスルーパスから三笘薫が勝ち越し弾を決め、王者の力を見せつけたかに思えた。万が一に備えてジェジエウを入れて、試合を締めにかかる念の入れようだった。
それでも、最後まで分からないのがサッカーの怖さだ。5分のアディショナルタイムの間に、仙台に再びゴールを割られてしまう。シュートを放ったのは、途中出場のマルティノス。そのシュートはスーペルゴラッソだったが、そこにボールを出したDF照山颯人の執念の“ボール受け”がポイントだった。
すでに試合終了間際で疲れている時間帯に、照山は川崎の泣き所であるアンカー脇に上がってボールをフリーで受けた。先発した若武者のこのプレーが、等々力の悲劇を呼んだ。