■中央へのドリブル誘導を逆手に
守備戦術を実践できるメンバーを見極めたこともポイントの一つだ。当初は先発から外れ続けた平岡康裕と、ボランチで起用されていた吉野恭平をセンターバックで固定。手倉森誠監督はボランチに強力なフィルター役を置くことが多いが、それとは異なる上原力也と松下佳貴のダブルボランチで安定感を作ることに成功した。
しかし、今回の川崎戦では連戦ということもあっていつもとは違うメンバーだった。5月5日のルヴァカップ清水戦のメンバーを軸にしたメンバーを送り込んだのだ。いつもとは違うセンターバックコンビ。清水には1-4で敗れたが、この試合では2失点しながらも追いつくことに成功した。多くの選手に守備戦術浸透しつつある証明でもあった。
攻撃面でも、守備戦術ほどではないが狙いは見られた。流れの中では個人のドリブルに頼る部分が多かったが、そうした選手を後半に持ってきた。川崎が後半に押し込まれる時間帯を作ってしまうことを狙ったものだった可能性がある。
また、川崎の守備が中央でボールを奪おうとするものであることも狙っていたかもしれない。仙台の1点目である中原彰吾のゴールは気田亮真のドリブルシュートがきっかけだが、川崎にとってこの失点の形はH広島戦とほぼ同じものだった。ドリブルを中央に誘導し、密集させて奪おうとしたもののシュートを撃たれ、その弾かれたところを詰めたのだ。
少なくとも、セットプレーは狙いを持ってプレーしていた。そのほとんどがファーにボールを送り込んでから展開するもの。この試合ではセットプレーからの得点はなかったものの、中2日でもスカウティングをしていた証だった。