【J1分析】G大阪を切り裂く「切っ先」相馬勇紀が示した「名古屋の資格」の画像
相馬は名古屋優勝の鍵になるか 写真:中地拓也

【明治安田J1リーグ 第11節 名古屋グランパスvsガンバ大阪 2021年4月22日 19:33キックオフ】

「守備は武器じゃない!」

 話を聞こうと集まった記者の一人の「このチームには堅守という武器があって……」という言葉に、かぶせ気味にこう答えた選手がいた。今から7年前、南アフリカでのことだった。

 大会開幕前には絶望的と言っていいほど不安視されながら、粘り強くワールドカップ16強まで進んだ日本代表。その要の一人、田中マルクス闘莉王の言葉である。

 このガンバ大阪との試合の前まで、名古屋グランパスは堅守を持ち味に5度の「ウノ・ゼロ」などで勝ち点を積み上げてきた。そして前節には、2点のビハインドから1点を返すのがやっとで、サガン鳥栖に敗れていた。

 優勝するチームは連敗などしない。つまり、名古屋に優勝を争う資格があるかが、このガンバ相手の試合で問われていた。

 新型コロナウイルスへの集団感染による長い活動停止期間があったとはいえ、名古屋のホームに乗り込んだG大阪は積極性に欠けていた。ボール保持率では、ややG大阪が優位。一方で、慎重に対応する名古屋も違いを見せる必要があった。

 その「切っ先」となる存在がいた。左サイドの相馬勇紀である。

 今季のリーグ戦で、連続先発はまだ1度しかない。だが、G大阪の攻撃を受け止めてからの反撃のボールは、この小柄な背番号11に集まった。そして、その期待に応えるように、相馬は躍動した。

 21分には、左サイドバックの吉田豊からのボールを受けると、内へ切れ込んでシュートに持ち込む。するとその7分後、またも吉田からのパスを受けた相馬は、ハーフウェイライン手前からドリブルを敢行。1対1で相対したG大阪DF三浦弦太の脇を通すクロスを上げると、これが山崎凌吾へのアシストとなった。

 先制の9分後には、ボールを受けるとすかさず遠目からシュートを放っている。その直後には、相手GKからのつなぎに圧力をかけ、ボールを奪い切っていた。攻守にエンジンは全開だった。

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