旗手の左サイドバックはこれが初めてではない。昨年、試合の中で一時的に務めることがあっただけでなく、アウェイでのサガン鳥栖戦で先発出場している。天皇杯、そして先週のゼロックススーパーカップでも左サイドバックで先発し、内容は試合ごとに良くなっていた。ただし、前線で躍動している姿を知っていると、サイドバックであることはもったいなさを感じさせていた。
そして新シーズン開幕戦、相手は攻撃的なマリノス、しかも対面に仲川輝人、どこまで登里の代わりが務まるのか、その結論はここで出そうだった。
試合が始まると、旗手は“代わり”と呼ぶには失礼な働きを見せた。体幹の強さを活かした対人守備だけでなく、展開を予測する良いポジショニングで仲川を自由にさせなかった。攻撃では三笘と使い使われの関係でかき乱した。2人で相手のプレスをかわして前線へ進むだけでなく、内へ外へとサポートに走り、相手にとって嫌な選択肢であり続けた。自らがサイドバックを経験したことで、ディフェンダーとして嫌なことを身をもって知ったようだった。
後半途中からはインサイドハーフに入り、最後までプレーした。サイドバックという消耗の激しいポジションで攻守に走り回ったあとでもインサイドハーフをやれてしまうスタミナ、どこでもこなせる頭の良さ、そして三笘との関係性。その全てが魅力的だった。
結論は出た。
「#2021のヒーローになれ」と表示された電光掲示板と共に見える背番号47は、決して登里の代わりではなかった。
鬼木達監督は嬉しい悩みを抱えることになった。登里が戻ってきてからも左サイドバックには旗手がいるかもしれない。
強すぎるフロンターレの強さがまた増してしまった。
■試合結果
川崎フロンターレ 2-0 横浜F・マリノス
■得点
21分 家長昭博(川崎)
43分 家長昭博(川崎)