■注目選手① FW:マルティノス(浦和レッズから加入)

 オッティ1人のスピードが全てを解決するほど、今のJ1は甘くない。カウンターで1点をもぎ取っても、それで勝てるとは限らない。勝ち点1をしぶとく積み重ねたとしても、4チームが降格する2021年のJ1は生き残れない。そこで注目なのがマルティノスだ。アタッカーとしての力はもちろんだが、最大の理由は別だ。

 横浜F・マリノス時代も、浦和レッズに加入した当初も、マルティノスといえばすぐ転んでファウルをアピールする選手、というイメージが付いて回った。思うような判定をしてもらえなかった時の不機嫌さの表し方もストレートで、味方選手にたしなめられる場面や誰も寄ってきてくれなくなる場面もあった。能力の高さはプレーの中で見てとれたが、そのイメージが先行して悪目立ちしてしまっていた。Jリーグを見ている多くの人は、おそらくこのイメージがあるのではないだろうか。

 しかし、昨シーズン、浦和が結果を出せない中で気迫を見せていたのがマルティノスだった。ファウルのアピールは減り、簡単に倒れなくなっただけでなく守備でも積極的に体を張って勝利のためにプレーする姿を見せた。その姿は浦和のサポーターの支持を徐々に集め、いつの間にか誰よりも浦和らしさを持っている選手としてプレーするようになっていた。

 ファウルのアピールをしすぎたり、判定で露骨に不機嫌になったりしたのは、勝利への欲求が強かったからだ。チームが結果を出せなくなった時に、それがチームを鼓舞して引っ張る方向に上手く変化した。

 昨シーズン、ベガルタは最後尾のヤクブ・スウォビィクが1人でチームを鼓舞していた。しかしゴールキーパーの位置からでは、自信を失いかけた守備陣の気持ちを整理させることはできても、なかなかチーム全体を押し上げることは難しい。マルティノスが前線でその強い勝利への執着心でチームを引っ張る存在になれば、引き分けではダメ、という今年の環境を乗り越えるキーパーソンになれる。

マルティノス選手 撮影/原壮史
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