■スタイルが見えなかった2020年シーズン
2019シーズンの横浜F・マリノスの優勝は、Jリーグのサッカーに新しい時代を切り拓くものだった。2018年に就任したアンジェ・ポステコグルー監督が徹底したスタイルは、前線からボールを奪いに行く、奪ったら時間をかけずに相手ゴールを目指す、攻め続けるというプレー。そしてそれを90分間続け、2019年シーズンの終盤には手をつけられないほどの威力を発揮した。残念ながら、2020年は新型コロナウイルスによる国内外の試合日程の混乱による過密日程と故障者続出でJリーグでもACLでも結果を残すことはできなかったが、再びJリーグに集中できる今季はさらに進化したサッカーが見られるのではないか。
その横浜FMに対抗して昨年大きな進化を遂げ、Jリーグのタイトルを奪い返したのが川崎フロンターレだ。前任の風間八宏監督の路線を2017年に受け継いだ鬼木達監督が手堅いサッカーに切り替えて2017年、2018年とJリーグを連覇。しかし2019年に横浜FMにタイトルを奪われると、2020年には攻撃的なスタイルをさらに徹底し、圧倒的な強さを見せて3回目の優勝を飾った。
この2チームと比較すると、浦和は「スタイル」が定まらず、チームがどんな方向性をもっているのか、なかなか見えてこなかった。大槻監督はそのスタイルを定めるチームづくりを模索し、時間はかかったものの10月には一定の方向性が見られるようになった。しかしクラブが早々と大槻監督の離任を決めたためか、シーズン終盤には「元のもくあみ」のような状態になってしまった。
その浦和が新監督として迎えたのが、46歳のスペイン人監督、リカルド・ロドリゲスである。2017年からJ2の徳島ヴォルティスで指揮をとり、現代的な全員サッカーのチームに変貌させるとともに、昨年はJ2で優勝、2014年以来2度目のJ1昇格をもたらした。前線から積極的に守備をし、しっかりボールを保持し、全員攻撃で得点を取るサッカーを身上とするロドリゲス監督には、明白なサッカーの「スタイル」がある。そしてそれをチームに植えつけるアイデアと実行力をもっている。それこそ、今季の浦和が期待できる最大の要因だ。