手倉森監督は今回の監督就任に際して、「被災地へシャーレを届ける」と言い切った。どん底の状況からの脱出ばかりが取り沙汰される仙台の指揮官は、それを凌駕する目標をあえて口にすることでチームやサポーターを前向きにしてみせた。杜の都から世界中を照らすうえで、現時点ではこれ以上ない指揮官といえよう。
そんな手倉森監督が今季に挑むに当たって獲得した選手は、個の能力で状況を打開できる選手が多い。
浦和から移籍してきたMFマルティノスや長崎での教え子であるMF氣田亮真、そしてFWエマヌエル・オッティは、スピードや技術を駆使したドリブルでチャンスを創出できる。また、磐田から期限付きで移籍してきたMF上原力也は豊富な運動量に加えてチームのためにパスをさばけるため、MF松下佳貴頼みだった中盤のゲームメイクに大きな存在感を放ってくれそうだ。
また、昨年はDFパラがファーストチョイスとなっていた左サイドバックには、名古屋からMF秋山陽介を獲得。秋山は縦への推進力を持つ選手だけに、最終ラインから攻撃を活性化してくれそうだ。
限られた予算の中で“個の能力”を持った選手を集めた仙台のフロントには賛辞を贈りたいが、現時点で手薄なのがストライカーである。
現在、FW登録の選手は赤﨑秀平、皆川佑介、マルティノス、オッティの4人。しかし、マルティノスとオッティは純粋なストライカーとは言い難い。皆川はポテンシャルこそ高いが、J1における過去のシーズン最多得点は「3」とやや物足りない。昨季はケガで不本意なシーズンとなった赤崎は、今季の仙台のスカッドにおける1トップでの適性には疑問が残る。